古典臨書研究をベースとして、現代書への展開。漢字、仮名、詩文書、少字・墨象等多彩な書の勉強が可能です。学生部もあります。

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2021.10月競書課題

漢字規定[良寛]
紙は西川玉林堂の衣笠、筆は同店のかな用古碑。終始鋒先を吊り上げて運筆する。私いま右手を痛めており薬指にほとんど力が入りません。良寛は筆管を柔らかく持つので、かえって指に力が入らなくてゆったり書けたような気がします。臨書作品には「臨」を入れましょう

 

大字かな節臨
落款を右側に入れた。私は、落款は作品左でなければいけないとは思っていない。芸術の世界において固定した観念は停滞と腐敗を生む。如何に臨機応変に事に当たれるか!それが大切である。紙は西川玉林堂衣笠、筆はかな用古碑。かな用古碑は是非一本お持ちになったほうがよい。あまりの書き心地のよさに驚くだろう。そして値段の安さに再び驚く。運筆において要となる用筆は鋒先の吊り上げである。

研究部[敦煌木簡]
書藝苑889号(1月号)29頁を臨書した。「千」の縦画を長く引き過ぎた。起筆は蔵鋒と逆筆で入り、収筆は波のように「波磔(はたく)」をつける。横画は送筆中央で上に反るが収筆部に向かって再び下降線をたどり、収筆で波磔させる。起筆と波磔直前の鋒先の位置は水平の同一線上に置く。これが意外と難しい。普段右上がりに書いているから、横画を水平に引けない方は結構多い。紙には目があるから、水平の紙の目を目印にして運筆するとよい。筆…衣笠、筆…かな用古碑

☆一枚目…筆は西川玉林堂さんの細雪。字典で金文の字体を調べ創意を加味して書いてみました。切れ味の鋭い筆致を心がけました。起筆は蔵鋒と逆筆、収筆は波磔などつけず平易に鋒先を抜く、もしくは右下方に向かって鋒先を抜く用筆。私は四十代の始めに金文を臨書する過程でこの技法を発見し密かに得意になっていました。しかしその後、書歴を積むうちに、この技法は「逆入平出」という用筆で清の時代に包世臣が気が満ちる技法として提唱していたことを知りました。この技法をよくつかう作家は芸術院では下谷洋子先生がいます。
☆二枚目…三蹟(道風、佐理、行成)の文字を字典から集字しアレンジを加えながら書きました。筆は細雪。

☆三枚目…これは木簡隷書をイメージし、私の純粋な創意だけで書いた完全自運です。筆は同じく細雪。
☆四枚目…今年度から条幅十四字創作は細字三体の課題と同じにしてあります。これは翠柳の細字草書に私の創意を加えて書いたものです。ただ翠柳の書きぶりを真似してもつまらないし、そこに何の発見もなければ心も生動しません。故に筆意も躍動しなくなります。臨書も創作もワクワク、ドキドキして書きたい。そうでなければ芸術をやる意味がないし、意義もない。筆は細雪です。これ一本あれば半紙臨書から条幅臨書創作まで幅広く対応出来ます。
補足…書の道を歩く上で字典は必須です。字典を引くなんて面倒くさい、そう考えている方は毎月書藝苑の月例課題を楽しんで出品するに留め、試験は受けるべきではないと思います。少なくとも準師範から上を目指す方は字典を持たなければ、心構えとして書の道のりを進む切符を手にするにふさわしくないです。
追伸…私事ですが、9月に入ってすぐに右手を痛め1ヶ月お稽古を休んでリハビリしていました。二三日前から手紙を書き始め、今朝から半紙臨書、そしていま条幅を書いてみました。薬指にほとんど力が入りませんが、まあこれも人生かと割り切っています。一時は落ち込んでどうしてよいか自分を見失いましたが、手を痛めたことで新たな執筆法を模索してみようと前向きに考えています。では皆様のご健筆を心から願っております。

 

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